Moonshot Research and Development

Item 7: Legislative Plans

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気象制御の実効化に向けた法的課題を整理・検討

本研究開発テーマは、気象制御手段の実験および実装をめぐる法的障壁を洗い出し、気象制御手段に特有の条件を法制度に反映させるための方法や、気象制御手段の負の影響に対する補償の仕組みなどを立案するために、主に文献調査に依拠しながら、災害対策関連法制およびそれらをめぐる理論的思潮について、整理ないし検討を行っています。
具体的には、①水災害対策関係法制における手続法上・組織法上の論点整理、②水災害応急対策の個別的検討、③わが国の治水政策をめぐる理論的思潮の明確化、④気象制御に資する保険制度の検討、⑤気象制御に資する国家補償の仕組みの省察などを実施しています。
これらの成果を踏まえて、気象制御に関する法的課題の解決にとって必要なアクションプランの策定を目指しています。

研究開発課題7-1気象制御への社会制度設計の検討

研究開発課題推進者: 重本 達哉(項目長)

研究概要

行政法の観点から、気象制御を主に行政組織が担う場合の制度的意義、権限分配のあり方、各種調整手続その他の法的課題を、憲法的価値や関係諸利益の実現を考慮しつつ検討します。
例えば、国内外の水災害対策に関する関連法(災害対策基本法・気象業務法など)を比較検討し、同項目の他課題の研究成果も踏まえ、行政法の観点から社会制度設計案を検討していきます。

研究開発方法

関連法の「関連」法たる所以や当該関連法の密な比較検討を主眼とする関連文献の収集ないし分析を中心としつつ、当該コア研究における他の課題推進者を中心とする学際的な研究会を定期的に開催して知見の精緻化ないし共有を図るとともに、適宜、気象制御に係る立法指針その他の制度指針の設計に必要な専門的知見を有するような、国内外の研究者や実務家を幅広く当該研究会に招聘し、あるいは、彼らを対象とするインタビュー調査を実施することによって、新たな気象制御手法や立法技術に係る情報を精確かつ貪欲に入手します。
上記指針の設計に向けた暫定的な研究成果については、適宜リスト化・マップ化等することによって可視化することに努めるとともに、当該コア研究における市民参加型の科学技術評価等の研究成果を参照しつつ、可能な限り早期に、一般市民に開放されたワークショップ等を企画することによって、世間の批判を仰げるようにします。

研究開発の重要性

新たな気象制御手法に係る社会制度の指針を立案するためには新たな発想が求められ得るので、例えば、生命倫理との関係を中心に議論が発展してきたものの、気象制御との関連では依然として検討が不十分なELSIないしRRIに関する議論自体について、市民感覚に配意しつつ抜本的に深めることが非常に有益です。とりわけ、当該制御手法の規模等からその主な担い手は行政組織が一般的に想定されることのほか、その制度的根拠の特定が法的には求められます。 なおかつ、当該手法の実装ないし継続的展開を確保するためには、国民の代表機関による厳格な手続をもって制定される法律を通じて安定的に正当化することが非常に有益です。そのため、気象制御の実効化に資する立法指針その他の制度指針を行政法的観点から模索することは、極めて重要です。

しかしながら、気象制御の実装(実験段階を含む。)に資する法令その他の社会制度は、憲法を頂点とする既存の法令その他の防災政策をめぐる社会制度との整合性を密に確保することによってこそ初めてその実効性が認められます。ただし、留意すべきなのは、防災に関する既存の法令等自体に課題が少なくないことです。

例えば、水災害に係る応急対応については、現在、災害予防及び災害応急対応の一般法である災害対策基本法によれば、主に地方公共団体の防災会議が毎年検討を加えなければならない地域防災計画に基づいて、他方で、頻繁な改正を経て今や水災害の被害軽減にとって欠かせない水防法によれば、都道府県知事や(主に市町村長がその地位を占める)指定水防管理団体の水防管理者が、水防協議会の調査審議を経て毎年検討を加えなければならない水防計画に基づいて実施することがそれぞれ予定されています。近年さらに、水防法によって新たに法定された大規模氾濫減災協議会によって、気象庁等の各種行政組織のみならず、鉄道事業者、ライフライン事業者等を含む多機関連携型の水害対応タイムライン(発災前後の防災行動計画)が作成され、その運用状況を確認することが――米国における成功体験を踏まえて――政策的に要請されるようにもなっています。
そこで、これらの計画間調整のあり方(特に、水防計画の現代的意義と課題)が、人口減少社会における動員可能人員の減少、彼らの二次被害の防止、水防関係者への不十分な指導連絡態勢を河川維持管理の瑕疵と評価する裁判例の考慮、外部からの武力攻撃に対して国民の生命・財産等を保護する国民保護法制との比較、早期の通常業務復帰を期して被害の最小化を図る各種事業継続計画(BCP)との有機的連携など様々な観点から、憲法上の権利・自由やこれら諸計画の運用の実際(度重なる検討の形骸化など)も考慮しつつ再検討する必要にあふれています。
同様の観点ないし考慮事項から、水防管理者から委任を受けた民間業者が土地の一時使用等の公用負担権限を行使しようとする際の手続や事後報告プロセスについて計画レベルでしか規律されていないことなどについて、手続法的に考察することも重要でしょう。これら諸計画の主な作成主体であり、災害対策基本法上「基礎的な地方公共団体」と位置付けられているのみならず、その他の水災害対策法制においても、上記の水防管理団体、公共下水道管理者、準用河川の河川管理者など多様な側面を有する市町村(長とその担当部局職員)の役割と限界について再整理することも不可欠です。近年ではさらに、水防法の度重なる改正や流域治水関連法をはじめとする流域治水プロジェクトの展開に応じて、市町村にはまさに「市町村」そのものとしても多様な役割を法的に課せられつつあるだけ余計に、そのように言えるでしょう。
この再整理の重要性は、大規模かつ重篤で人為的な災害を念頭に置いて特別な法制度が整備されている原子力災害関連法制において、原発立地都道府県・市町村あるいは周辺住民の関与の弱い仕組みが採用されているにもかかわらず、それらの理解ないし協力を得るために、結局のところ、避難対策に関する原子力安全協定がそれらと電力会社との間で締結されている現状に鑑みれば、極端風水害を念頭に置く本研究にとっても、到底否定できません。

このように、防災に関する既存の法令等にも課題が山積しているため、漁業関係者、海運業者や航空業者との情報連携ないし行動連携、水上利用に伴う周辺環境への配慮や国際協調なども問題になり得る気象制御の実効化に資する立法指針その他の制度指針を検討する際には、それらの課題を併せて検討することが不可欠です。
このとき、例えば、環境政策や水運を重視しつつ、国際的調整の仕組み、保険をはじめとする経済的手法や6年という中期的なPDCAサイクルを制度上の前提とする洪水リスク管理計画を法定し、運用し、なおかつ、その改訂を積み重ねているEU加盟各国の経験は、極めて有益な参考資料であるように思われます。

また、以上に関する法的議論自体もまた、既存の議論との整合性が当然密に求められるので、その方法は、上記「研究開発方法」のようなオーソドックスなものを基本とする方法にならざるを得ません。それでもなお、(行政)法学コミュニティの枠に捕らわれない、学際的で市民開放型の多段階的コミュニケーションの場を追求する上記「研究開発方法」には、一定の新規性ないし重要性が認められるべきです。

取り組みにあたり予想される問題点とその解決策

集中豪雨被害から解放される社会を実現するための新たな気象介入手段候補を実効化させるための行政法的検討を主眼とする本研究にとって、当該介入手段候補の理解は必要不可欠です。しかし、最新の気象学ないし気象工学・水工学の知見を必要とするその理解は、法学研究を専門とする課題推進者にとってしばしば困難を伴う可能性があります。
しかし、上記の学際的な研究会等における密なコミュニケーションの機会を通じて、当該理解の促進ないし漸進を期します。以上のプロセスは、最終的に当該介入手段の実装に当たって必要であり、更に市民の理解を効率的に得るためのコミュニケーション技術の深化にも資するでしょう。

また、当該検討の結果、当該介入手段候補にとって「特徴的な」立法指針その他の制度指針を考案する必要に乏しいことが判明する可能性もあります。しかし、その場合には、その乏しい理由を明らかにし、整理すること自体が、既存の法令その他の社会制度がどの程度の科学技術の進化に対応可能であるかを明らかにするための、極めて有益な資料になると考えられます。

メンバー
PI
SHIGEMOTO, Tatsuya
Associate Professor, Osaka City University

研究開発課題7-2気象制御における国家補償

研究開発課題推進者: 近藤 卓也

研究概要

気象制御を社会実装するうえでは立法化が不可欠です。
特に渇水や漁業への影響をはじめ何らかのリスクを伴うものであり、補償制度の設計は必須といえます。既存の法が想定する問題状況との比較分析を進め、気象制御に求められる補償制度を明らかにします。

研究開発方法

関連文献の収集ないし分析を中心としつつ、当該コア研究における他の課題推進者を中心とする学際的な研究会に参加し知見の精緻化・共有を図ります。また、適宜、気象制御の補償制度を設計するうえで必要な専門的知見を有する国内外の研究者や実務家にインタビュー調査を実施することによって、新たな気象制御手法や立法技術に係る情報を精確かつ貪欲に入手します。
暫定的な研究成果については、可能な限り早期に公表することで世間の批判を仰げるようにします。

研究開発の重要性

気象制御手法が渇水や漁業への影響をはじめとする何らかのリスクを不可避的に伴うものであり、それを承知で気象制御を行う以上、当該リスクが顕在化した場合の補償制度の構築は、気象制御を社会実装するうえでの必須事項といえます。現行法制においても、予防接種法や原子力損害の賠償に関する法律など、被害者救済制度を備えた立法例はあるものの、リスク分配のあり方や因果関係の証明など、気象制御手法には既存の補償制度の仕組みを単純に転用することでは解決できない側面があると思われます。
したがって、気象制御に求められる補償制度にいかなる法的障壁があり、またそれをいかに克服するかを、既存の法制度との比較を通じて明らかにすることは、気象制御手法によって集中豪雨被害から解放される社会を実現するうえで不可欠の作業であるといえます。

取り組みにあたり予想される問題点とその解決策

気象介入手段候補を実効化させるために必要と考えられる補償制度の設計に道筋をつけることを目的とする本研究にとって、当該介入手段候補の理解は必要不可欠です。しかし、最新の気象学ないし工学の知見を必要とするその理解は、その種の知見について素人同然の課題推進者にとってしばしば困難を伴うように思われます。しかし、上記の学際的な研究会等における密なコミュニケーションの機会を通じて、当該理解の促進ないし漸進が期待されます。 以上のプロセスは、最終的に当該介入手段の実装に当たって必要であり、市民の理解を効率的に得るためのコミュニケーション技術の深化にも資すると期待されます。

メンバー
PI
KONDO, Takuya
Associate Professor, The University of Kitakyushu

研究開発課題7-3気象制御実施に関するルール策定

研究開発課題推進者: 福重 さと子

研究概要

国・公共団体の水害対策・気象制御への権限・役割を検討します。
具体的には、国内外の水災害対策に関する関連法を比較検討し、気象制御の実施者に対するルール・仕組み・手続きを検討します。またその検討を通して、気象制御の社会実装において問題となる法的論点や、新たに必要となる制度設計を明らかにします。

研究開発方法

気象制御の実施者に対するルール策定の課題としては、様々なものが考えられます。たとえば、現場の裁量の問題があります。気象制御をするかどうかは、その必要が生じたと考えられる事態が生じる時ごとに、比較的短時間の間に決定しなければならないと考えられますが、複雑な判断を要する場合には、短時間で判断をすることができません。このためには、事前にどのような判断をするかの基準を定めておく必要があります。その一方で、事前に予想できないことが起きたときに対応するために、判断の余裕(裁量)を設けておく必要があります。このような考慮を前提として、どのようなルールを作るかということが検討されなければならないと考えられます。
また、たとえば、気象制御の実施者の判断が、多数の者に影響を与えるときには、実施より前にその間で調整を行っておくことが必要であるが、それをどのように行うかということは難しい課題です。また、少し種類の異なる問題ですが、気象制御技術を悪用する者が出てくることが考えられ、それをいかなる法的枠組みにおいて抑制するかということも重要となります。

本研究開発では、気象制御の実施者に対するルール策定における法的課題を明らかにし、またそれに取り組むための法的枠組みを構成するため、類似の課題に同様に取り組んできたと考えらえる既存のルールを参考にしながら検討を行うこととします。
具体的には、現場の裁量の問題については、同じく短時間での判断を的確に行うことを目的として設けられる、ダム操作のルール、また、避難時タイムライン等について、その内容やルール策定の過程を見ることが参考になるように思われます。利害関係者の事前の調整という課題についても、同じルール策定に関する知見が役立つであろうと考えられます。さらに、気象制御の場合には、一国を超えて利害関係が生じる可能性があるため、これらの利害調整を国際的に行う法的枠組みが必要となると思われますが、この点については、たとえば、海洋汚染防止の枠組みや、海外の国際河川の汚染防止の枠組みなどが参考になると思われます。
このように、本研究は、気象制御の実施について、既存のルールを参考にしながら、新しい法的枠組みを構築することをめざします。

研究開発の重要性

気象制御の具体者に関するルールづくりの研究は、気象制御の実施のために重要なものであることはいうまでもありません。気象制御の実施者は、比較的短期間の間に実施をするかどうかを判断しなければならないところ、予めルールが定められていなければ、このような判断をすることは困難となることがあります。たとえば、気象制御に利害を有する者が複数いる場合に、実施の場で利害調整を行うことはほぼ不可能であり、事前に調整を済ませてルール化しておくことが必要になるように思われます。
このように、気象制御の実施に関する法的ルールは、気象制御技術の実用化のために必要なもので、かつ不可欠の要素であると考えられます。

このようなルールをつくるにあたり、現在までのところ、確立した法的理論があるわけではありません。ダム操作や、水害避難の領域ごとに、その領域に適したルールの策定が行われてきたところです。気象制御は、それがどのような手段をとるにしても、これまでとは異なる位相の法的課題を生じさせると考えられ、従来のルールをそのままあてはめることはできません。
とはいえ、気象制御の実施に関するルールを無から生み出すことはできず、これまで個別の領域で蓄積されてきた知見を調査し、整理し、必要に応じて一般化した上で、本研究で採用される手段に応じて再構成していく必要があります。本研究は、そのような創造的な過程で、研究を行おうとするものです。

気象制御技術は、従来にない大規模な人工施設を用いることとなると考えられるものであり、また悪用の懸念もないではないことから、その実施に関するルールの検討は、これまでの知見を活用するとしても、容易ではないものと考えられますが、不完全であっても取り組む必要の高いものであり、また、この調査研究によって新たに得られた知見は、今後の同種の技術開発をするにおいて、有益な知見となり得るものと考えられます。この点からも、本研究開発は、きわめて重要なものです。

取り組みにあたり予想される問題点とその解決策

本研究は、気象制御実施の場面におけるルール策定における法的課題を明らかにするために、ダム操作のルール、また、避難時タイムライン等について、その内容がどのようなものか、また、策定の過程がどのようなものかを参照のために検討するものですが、このうち、とくに策定の過程についての課題を明らかにすることが可能なほどに質量的に十分な文献調査ができるかどうかは、現段階では明らかではありません。策定の過程に関する検討は、本研究の目的にとって重要なものであるため、このような場合には、参照すべき類似の例を見つけるために、先行研究・文献調査の対象を拡大することとします。外国に模範となるような法制度・法理論がないかを探索することも可能です。

本研究は、気象制御手段に即したルールづくりにおける法的課題を検討しようとするものであるところ、どのような気象制御手段を採るかが最終的に確定されるかによって、本研究の対象や目的を修正していく必要が生じるものと思われます。そのような修正の必要に応じるには、研究対象を予め広めに設定することが必要となります。また、本プログラムに携わる他のPIと定期的に会合を開き、それぞれの研究方針を共有することが必要となります。

メンバー
PI
FUKUSHIGE, Satoko
Professor, Okayama University

研究開発課題7-4気象制御への保険制度

研究開発課題推進者: 嘉村 雄司

研究概要

気象制御が社会実装された場合、本来被害のない地域に物的被害・人的被害が生じる可能性があり、保険の仕組みを利用した補償・保障の仕組みを検討します。
その際に、わが国の伝統的な考え方に基づけば、「保険」の仕組みを利用することが考えられます。保険法の分野においては、近年普及し始めている自動運転への対応等、新たな技術の社会実装に伴って発生しうる損害の補償について議論の蓄積があります。それらの議論や現行の水害保険に関する知見を踏まえ、気象制御の社会実装に関する制度について検討・立案します。
更に、課題7-2で進める国家による補償制度の検討との適切な役割分担の方法を検討します。

研究開発方法

本研究開発では、気象制御の実効化に不可欠と思われる保険制度の構築に向けて、主に保険法的観点から、既存の関連法(水害保険に関する法的ルール、火災保険水災補償条項、全米洪水保険制度など)の現状と課題の整理、気象制御介入手段候補に関連する法的障壁の洗い出し、法的障害に関するELSI的検討を行い、気象制御に係る法的障害の解決に向けたアクションプランの立案を進めます。
そのために、関連文献の収集ないし分析を中心としつつ、他の課題推進者を中心とする学際的な研究会に参加し、知見の精緻化・共有を図ります。また、気象制御に関する保険制度を構築するうえで必要な専門的知見を有する国内外の研究者や実務家にインタビュー調査を実施することにより、新たな気象制御手法や立法技術にかかる情報を入手します。
暫定的な研究成果については、リスト化やマップ化等を行うことにより、可能な限り早期に公表するようにします。

研究開発の重要性

気象制御が社会実装された場合、本来被害のない地域に物的損害・人的損害が生じる可能性があります。このような損害をどのように補償・保障するのかについては、わが国の伝統的な考え方に基づけば、保険の仕組みを利用することが考えられます。
しかし、そもそも水害に関する保険のあり方に関しては、近年の水害被害の増加を受けて、既存の仕組みの存続自体に議論のあるところです。また、気象制御に関連する水害保険の位置づけ、国家による補償制度との適切な役割分担、および、ELSI的観点からの検討は行われていないのが現状です。
気象制御の社会実装においては、このような保険法的観点からの総合的・包括的な議論が不可欠です。

取り組みにあたり予想される問題点とその解決策

関連法の現状と課題の整理にあたっては、国内法に限定すると、適切な関連法の選定が困難になることが想定されます。そのため、国内法のみならず、外国法も視野に入れて、比較法的観点から整理するように努めます。また、法的障壁の洗い出し・検討にあたっては、保険法的観点を中心としつつも、他の課題推進者との連携を図りながら、より広範な観点から洗い出し・検討を行います。

メンバー
PI
KAMURA, Yuji
Associate Professor, Shimane University

研究開発課題7-5水害リスク管理における気象制御の位置づけ

研究開発課題推進者: 堀 智晴

研究概要

気象制御が内包する社会的課題(技術の限界、副作用など)を整理し、対応策を検討します。
また、社会へのリスク開示の方法や、計画上国家が対応すべきリスクレベルに対応できていない状況での災害対策はどうあるべきか、これまでの水害対策、水害裁判、流域治水に関する知見を活かして検討します。

研究開発方法

我が国の治水政策、治水計画における基本的な考え方の変遷を、特に、行政が保証しようとする安全性のレベルと内容、主に用いられる治水手法を中心に整理します。次いで、1972年の大東水害訴訟以降の水害に関する損害賠償請求訴訟の事例を収集し、特に原告の請求事由や争点について整理します。
治水政策の歴史と水害訴訟の系譜を組み合わせて分析することで、主な水害の発生源である河川の管理に関する行政の論理と、住民が河川管理に期待する安全性に関する範囲の一致点と相違点を明らかにします。
これらの分析と、気象制御技術のインパクトやリスク、実行可能性、ガバナンスといった側面から、水害リスク管理における気象制御技術の位置づけと守備範囲を明らかにします。

研究開発の重要性

気象制御は、水害の原因となる豪雨というハザードを直接制御する試みです。
一方、水害自体は豪雨が直接住民に作用して発生するものではなく、豪雨が山腹斜面、河川、水路を通じて排水されている過程で生じるものです。そのため、水害対策は、雨水が排水されていく場において行われることがほとんどですが、未だ、河川整備基本方針に定められる安全度が実現されていない河川がほとんどです。
気象制御という実施場が従来の対策と全く異なる手法を、こうした水害リスク管理の体系にどのように位置づけるべきか検討することで、費用負担、技術自体のリスクマネジメント、従来の治水手法との代替性など、本技術の社会実装の考え方を示すことができます。

取り組みにあたり予想される問題点とその解決策

我が国の治水政策、治水計画における基本的な考え方の変遷を整理していくうえで、十分な証拠となる文献が存在するかは、一つのポイントです。行政文書がどの程度残されているか、また、残されている行政文書に、個別具体的な政策のバックグラウンドとなる考え方が明記されているとは限らないことにも注意を要します。
ただし、本課題推進者は土木工学の立場から治水計画論を長年研究してきた実績があり、これまでの調査分析経験に基づいて、必要に応じて関係者に聞き取りを行うなど、研究を進めるうえでの代替手法を、必要に応じて検討することができます。

メンバー
PI
HORI, Tomoharu
Professor, Kyoto University
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