ムーンショット型研究開発

研究開発項目6:気象介入手段の工学的実現

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介入手段の工学的・ELSI的な実現性、気象学的な実効性、安全性を検討

雨被害を未然に防ぐ工学的な気象介入は、人類史上本格的に取り組んだ経験のない未知のテーマであり、現在の科学技術を駆使しても決して容易な課題ではありません。仮に実現可能な方法であったとしても、安全面や倫理面に照らした慎重な事前検討が必要です。
現在提案されている手法の一つとして、マイクロ波を上空の一点に照射することで大気加熱を促し、人口密集域から離れた地点に雨雲形成を誘発するマイクロ波大気加熱技術があります。この手法が気象学的な実効性を持ちうるのか、また安全性に問題がないのか、工学的な室内・室外実験に先立ち計算機上でシミュレーションを繰り返し充分に確認を行うステップが欠かせません。

研究開発課題6-1大気加熱・シミュレータ

研究開発課題推進者: 増永 浩彦(項目長)

研究概要

気象介入とくにマイクロ波加熱について、技術的実現可能性をシミュレーションに基づき机上検討します。
まず、既存の気象レーダー・シミュレータに改良を加え、マイクロ波照射による大気加熱を計算機上で数値実験するツールを構築します。そのツールを用い、研究開発課題4-1「気象制御計算システムの開発」および研究開発課題5-1「気象モデルを用いた介入操作の有効性評価」と連携しながら最適な周波数や発振電力等の調査を行います。

研究開発方法

マイクロ波照射による大気加熱の実現可能性を机上検討により検証を行うため、計算機上で大気加熱を仮想的に実験するシミュレータ開発ならびにシミュレーション実施を行います。
具体的には、気温・湿度・雲などで構成される気象場を入力値として、地上に設置した単一または複数の放射機からのマイクロ波照射による局所的な気温上昇効果を定量的に評価します。
また課題間連携として、研究開発課題4-1「気象制御計算システムの開発」および研究開発課題5-1「気象モデルを用いた介入操作の有効性評価」に、本課題で開発されたマイクロ波加熱シミュレータのソースコードを提供します。課題4-1および5-1は、大気加熱シミュレータをオンライン実装した気象数値シミュレーションを実施します。

研究開発の重要性

技術的に実現可能な放射機設計から充分な大気加熱効果が得られるかどうか、装置開発に先立ち机上検討を行うことはフィージビリティ調査として不可欠です。
装置設計に先立ち、理想的なマイクロ波周波数の選択、必要とされる電力、最大の加熱効果を得るための放射機の台数と配置など、計算機上のシミュレーションではコストやリスクをかけず実験を事実上無制限に繰り返し検討することができます。

取り組みにあたり予想される問題点とその解決策

大気加熱を意図したマイクロ波放射機は世界的に前例のない装置であり、マイクロ波照射に特化したシミュレータも現時点では存在しません。他に実績のない先駆的な研究開発であるため、予期せぬ技術課題に直面する可能性は否定できません。本研究開発課題のPIは当該レーダー・シミュレータの開発者と共同研究実績があり、開発上の問題点が浮上した場合は開発者に直接意見を求め解決に当たります。

メンバー
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