ムーンショット型研究開発

研究開発項目2:データ駆動型気象予測手法の開発

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深層学習などのデータ駆動型アプローチによる気象予測手法を開発

気象を対象とした制御手法において律速となる莫大な計算量を解決するため、深層学習などのデータ駆動型アプローチによる気象予測手法を開発します。
ここで、深層学習などによるデータ駆動アプローチによる気象予測を実現することで、接線形モデルを近似し、モデル予測制御などの制御手法に接続する事が可能となります。領域気象予測システムや、気象庁の現業予測データを利用して代理モデルを訓練し、計算負荷の低い代理モデルで、モデル予測制御に必要な大アンサンブル予測を実現します。

研究開発課題2-1潜在変数モデルによる気象予測計算

研究開発課題推進者: 松岡 大祐(項目長)

研究概要

深層学習を用いた気象代理モデルを開発します。領域気象予測システム(SCALE-LETKF)や、気象庁の現業予測データを利用して代理モデルを構築し、計算負荷の低い代理モデルで、モデル予測制御に必要な大アンサンブル予測を実現します。
具体的には、現在の気象情報を入力として、未来の気象場を予測する変分オートエンコーダなどの潜在変数モデルを構築します。潜在変数に摂動を与えることで、アンサンブルを生成します。

研究開発方法

Vision Transformer等の深層学習アーキテクチャをベースとした、潜在変数を確率分布とした時系列予測モデルを構築し、潜在変数空間において妥当な摂動を与えることで、特に集中豪雨等の極端現象発生時における大規模アンサンブルを低コストに生成するための技術開発を進めます。

なお、災害緩和のために必要となる海上豪雨の規模や、陸域降雨量の低減量は、災害イベントにより異なると考えられるため、研究開始時点では明確な数値目標を設定しません。
研究プロジェクト全体としては、研究開発課題5-2の成果も踏まえ、海上豪雨形成の可能性が高い事例を令和5、6年度に絞り込みます。また、選定された事例に対し、研究開発課題8-1、8-2により洪水氾濫計算・経済被害推定計算を進め、どの程度の海上豪雨生成量・陸域降水の低減量が必要か調査し、低減すべき降水量の目標値に対し、研究開発課題5-1、5-3では数値モデルを用いて海上豪雨生成に有効な操作特定が研究されます。本課題において予測対象とする現象や時空間スケール、時空間分解能については、これらの他研究開発課題とも連携し早期に設定します。

また研究開発においては、気象庁気象研究所の研究グループを研究参加者として迎え、連携を図ります。 具体的には、気象研究所・気象観測研究部第四研究室と、深層学習による気象情報の潜在変数表現の連携を図ります。また、気象研究所・気象観測研究部第四研究室とは、領域気象予測モデルから出力されるアンサンブル予測情報に関するデータ提供を受けると共に、深層学習によるアンサンブル生成に関する技術・知見交換を行います。

研究開発の重要性

数値気象モデルに代表されるプロセス駆動型を用いた予測アプローチは一般に計算負荷が高く、気象制御を目指した膨大な量のモデル予測制御を実証するには多大なる計算コストを必要とします。
深層学習をベースとしたデータ駆動型のアプローチを用いて気象予測を代替することで、モデル予測制御の実現に必要な大規模アンサンブル生成を低コスト化することが可能となります。

取り組みにあたり予想される問題点とその解決策

一般に代理モデルの構築(大量データを用いたモデルの学習)そのものには、大規模並列化されたGPU計算機の長時間利用が必要となりますが、現時点ではそのような計算環境を今すぐに用意することは容易ではありません。
国内のGPU搭載スーパーコンピュータの利用申請を進めるとともに、超解像技術等を併用した計算負荷の低い代理モデル開発を行うことで、計算環境の問題の解決を図ります。

メンバー

研究開発課題2-2注意機構をもつ気象予測学習器の開発

研究開発課題推進者: 計良 宥志

研究概要

深層学習を用いた気象代理モデルを開発します。
領域気象予測システム(SCALE-LETKF)や、気象庁の現業予測データを利用して代理モデルを訓練し、計算負荷の低い代理モデルで、モデル予測制御に必要な大アンサンブル予測を実現します。
MicrosoftのClimaXなど利用可能な注意機構を持つ深層学習器を活用し、領域気象予測計算を高速実行可能な代理モデルを開発します。
更に、敵対的摂動などの技術を用いて、気象予測を大きく変えるツボ(効果的な介入)を明らかにします。

研究開発方法

Transformer等の注意機構を持つ深層学習モデルを中心に調査・設計し、高次元の気象データを効果的に学習可能なモデルおよびその訓練フレームワークを選定します。学習データとしてはECMWFや気象庁の再解析データを用いて研究を開始します。その上で、気象庁の現業気象予測データなど、各種公開データへの発展を図ります。

なお、災害緩和のために必要となる海上豪雨の規模や、陸域降雨量の低減量は、災害イベントにより異なると考えられるため、研究開始時点では明確な数値目標を設定しません。
研究プロジェクト全体としては、課題5-2の成果も踏まえ、海上豪雨形成の可能性が高い事例を令和5、6年度に絞り込みます。また、選定された事例に対し、課題8-1、8-2により洪水氾濫計算・経済被害推定計算を進め、どの程度の海上豪雨生成量・陸域降水の低減量が必要か調査し、低減すべき降水量の目標値に対し、課題5-1、5-3では数値モデルを用いて海上豪雨生成に有効な操作特定が研究されます。本課題において予測対象とする現象や時空間スケール、時空間分解能については、これらの他課題とも連携し早期に設定します。

研究開発の重要性

気象予測を行う代理モデルは、本プロジェクトが実現を目指す「海域での豪雨生成・陸域での降雨量低減による豪雨被害低減」を計算機上で実証するために必要不可欠です。
特に、深層学習モデルによる気象予測代理モデルはその計算負荷の低さと高い性能から、有効な代理モデルとなることが期待されます。深層学習モデルの出力を大きく変化させる微小な入力の変化は効率的に計算可能であるため、単なる予測ではなく介入の効果の検証を行うという点においてもこの代理モデルは活用可能です。

取り組みにあたり予想される問題点とその解決策

大規模かつ高次元の気象データから効果的に学習するために、深層学習モデルの構成要素およびその設計を注意深く定める必要があります。
特に注意機構は非常に強力である一方でその学習負荷も高いため、適切なスパース化や再帰構造を導入した効率的なものを利用・設計します。
また素朴な学習により得た代理モデルの出力はやや現実の現象から乖離する傾向にあります。学習における損失関数および正則化を実験を通じて決定し、これを回避します。
大きな出力変化をもたらす微小介入の計算においては、敵対的摂動に関する研究群の知見を活かしつつも、非現実的な摂動を避けるための正則化または制約を含めます。

メンバー
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