深層学習や視覚情報処理技術を用いて、集中豪雨の生成過程や介入効果を4次元で可視化
本研究開発項目では気象制御を実現する上で必要となる社会調査・発信を、情報科学を活かして推進します。
深層学習や視覚情報処理技術を用いて、集中豪雨の生成過程や介入効果を4次元で可視化し、気象操作の影響を解析することで気象制御研究の加速を図ります。
更に、この可視化システムを用いて、プロジェクトのアウトリーチ推進にも貢献します。
研究開発課題10-1深層ニューラル場等による移流モデリング
研究開発課題推進者: 舩冨 卓哉(項目長)
研究概要
集中豪雨の形成過程に関する気象学的検討の加速や介入結果の検証に資する可視化を行うため、気象数値モデルの内部変数や気象レーダーの観測データなどの4次元データを対象とし、3次元空間中の時間変化をモデリング(移流モデリング)する技術を開発します。
深層ニューラル場等のデータ駆動的手法による移流モデリングにより降水予測を実施すると共に、気象操作が移流に与える影響を評価します。
研究開発方法
まずは気象観測データを用い、雲や雨域を対象とした局所地域や全球での移流モデリングを実現する技術を開発します。研究開発課題10-2の課題推進者と協働し、集中豪雨の形成過程に関する気象学的検討に資する可視化を行う技術を開発します。また、介入結果の検証に資する4次元データを選定し、それを対象とした移流モデリングを実現する技術を開発します。その後、モデリング結果の可視化を行います。
研究開発の重要性
視覚情報処理技術を用いて集中豪雨の生成過程や介入効果を可視化することは、気象操作の影響を解析する上で重要な技術であり、気象制御研究の加速が見込まれます。また、このような可視化技術を用いた社会発信は、気象制御に対する国民の理解を促進することにも資するため、気象制御手法の社会受容を実現する上でも必要です。
形成過程の可視化には気象現象の連続的な時間変化を表現することが必要ですが、可視化対象となる気象数値モデルは気象に係る物理量を各地点・各時刻で離散的に格納したデータ集合でしかありません。本研究開発項目は、この各地点・各時刻で離散的に格納したデータ集合に対して深層ニューラル場等の技術を基礎とすることで、連続的な時間変化を記述する関数表現を獲得します。
集中豪雨の形成過程や介入結果の可視化に必要となる連続関数表現を抽出する技術であり、気象に対して有効な介入方策を検討するために重要な研究開発項目です。
取り組みにあたり予想される問題点とその解決策
現時点で最新かつ注目を集めている「深層ニューラル場」の技術を基礎として移流モデリングを実現する計画ですが、深層学習技術分野の技術革新は目覚ましく、現在最先端の技術であっても2~3年後には新たな手法に取って代わられていることが珍しくありません。
基礎となる技術については随時技術動向調査を行い、その時点での最新技術を取り入れられるよう柔軟に計画を見直していきます。
メンバー
研究開発課題10-2介入効果を評価する可視化手法の開発
研究開発課題推進者: 久保 尋之
研究概要
視覚情報処理技術を用いて、集中豪雨の形成過程や介入効果を4次元で可視化し、気象制御研究の加速を図ります。
具体的には、気象数値モデルの物理量を、4次元ボリュームレンダリングによって可視化し、海上豪雨の形成に有効な介入の効果の視覚的な理解を深耕することで、気象制御研究を加速化させます。
さらに、可視化システムを活用して本シナリオ成果を社会に発信します。
研究開発方法
まず、大規模ボリュームデータの表示方法と表示デバイスについて技術動向調査を行います。
次に限定的な地域・時間スパンにおける小規模な4次元ボリュームデータを可視化するためのプロトタイプを開発し、気象介入による効果を表す代表的な1事例について可視化を行います。さらに、大規模な4次元ボリュームデータを扱うためにデータを効率的に処理するための技術開発を行ったうえで、気象介入による効果を示す複数の事例について4次元ボリュームデータ可視化を行い、視覚的な理解を深めるための表示システムを実現します。
研究開発の重要性
豪雨の形成過程や気象制御の介入効果を4次元ボリュームデータとして視覚的に表示することで気象制御研究の加速を図るとともに、開発予定の可視化技術によって視覚化された映像をプロジェクトのアウトリーチ活動に活用し、開発する技術に対する理解と信頼を獲得します。
取り組みにあたり予想される問題点とその解決策
計測で得られる気象の4次元ボリュームデータは、あくまで各地点・各時刻における離散的な情報の集合であり、実際の気象変化を可視化する際には課題になり得ると考えられます。そのため、研究開発課題10-1と連携して連続的な情報として可視化を行うことで解決を図ります。